葬儀での守り刀の風習について


 守り刀(まもりがたな)とは、亡くなった方のために用意する葬祭用具です。その目的は魔除け・お祓いです。

 日本固有の宗教である神道では、死を穢れ(けがれ)として捉えます。穢れは魔物・魑魅魍魎(ちみもうりょう)を呼び寄せる悪しきものです。また穢れは不浄なものとして忌避(きひ)されます。                        

 刀には、魔物や魑魅魍魎を遠ざけ穢れを祓い浄める力があるという信仰がありました。そこから守り刀の風習が生まれたのでしょう。これは古来の神道の影響を受けた風習といえます。

 仏教では、故人は死後旅路に出立(いでたつ)という考え方があります。道すがら邪気や悪霊に遭遇するかもしれません。

 守り刀は護身用に携行する刀、つまり懐刀(ふところがたな)という意味合いを持っています。浄土真宗では、阿弥陀如来の導きにより亡くなった方はただちに成仏するという考え方があり、故人は死して既に清らかな身になっているので、魔除けやお祓いをする護身用の刀を携行するといったことは不要とされます。                              

 人と最後のお別れをするうえで、各宗教の考え方や風習などの意味合いを心得ておくことで葬儀という儀式が一層趣深くなるでしょう。